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強制執行に必要な債務名義とは?取得されてしまった場合の対処法

  • 文責:所長 弁護士 岡田大
  • 最終更新日:2025年1月7日

約束の期限になってもお金を返してもらえない場合、お金を貸した側である債権者は、借りた側である債務者から強制的に返してもらうほかありません。

しかし、だからといって、債務者を脅すなどして無理矢理お金を返してもらうことはできません。

脅迫や暴行などの行為は犯罪となってしまいます。

そこで、債権者がお金を返してもらうためには、裁判所を通した強制執行(きょうせいしっこう)という手続が必要です。

この強制執行をするために必要なものが、「債務名義」です。

今回は、この「債務名義」について、弁護士がわかりやすく説明します。

1 債務名義とは?

債務名義とは、「私法上の請求権の存在と範囲」を表示した公的な文書で、法律により執行力が認められたものを言います。

例えば、お金を貸したAさんが返してくれないBさんに対して強制執行を行うために、Aさんは、「Bは、Aに対して、100万円を支払いなさい。」と書かれた債務名義を手に入れる必要があります。

つまり、Aさんは100万円を返してもらうために裁判を起こして勝ち、「勝訴判決」という債務名義を手に入れて、それをもとにBさんに強制執行するという流れです。

このように、債務名義というのは、強制執行するために必要な裁判所のお墨付きのようなものなのです。

逆に言えば、債権者に債務名義を取られている場合、債務者はいつ強制執行されてもおかしくないということです(強制執行とは、債権者の権利を、国が強制的に実現する手続のことを言います)。

ちなみに、AさんがBさんを脅してお金を返してもらうことはできないということに関しては、以下のような判例があります。

「権利を持っている人が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり、かつ、その方法が社会通念上認容すべきものと認められる範囲を超えないかぎり、違法ではないですが、その範囲程度を逸脱してしまうと恐喝罪(刑法249条)が成立し得る(最判昭和30年10月14日)。」

2 債務名義の種類・取得方法

民事執行法には強制執行のやり方(方法)が定められていて、民事執行法第22条では債務名義の種類が書かれています。

債務名義は、誰が作るかによって3種類に分かれます。

・裁判所が作る債務名義

・裁判所書記官が作る債務名義

・公証人が作る債務名義

⑴ 裁判所が作る債務名義(確定判決など)

裁判所が作る債務名義には、確定判決、和解調書、調停調書などがあります。

確定判決というのは、「Bさんは、Aさんに100万円を払え」などと書かれた勝訴判決であって、しかも、上級審(たとえば、第一審裁判所が地方裁判所なら高等裁判所)に不服申立をできない状態になったものです。

和解調書というのは、裁判になっても判決までは出されず、裁判の途中で和解したときに作られる書面です。

互いに合意した和解の約束が破られた場合にも、債権者は強制執行できるのです。

調停調書というのは、例えば離婚調停などでの話合いの結果がまとめられた書面です。

離婚調停で「養育費を毎月○万円払う」という取り決めがされ、これが守られなかった場合にも強制執行できるのです。

⑵ 裁判所書記官が作る債務名義(支払督促など)

裁判所には、裁判官だけではなく裁判所書記官という人もいます。

この裁判所書記官が作る「支払督促」なども、債務名義のひとつです。

「支払督促」は、裁判を提起することを煩雑に感じた債権者の多くが取る手続きです。

これを放置し、支払督促が送達された日から2週間以内に異議申立を行わなければ、債権者の債権の存在が認められるだけでなく、上記の「確定判決」がなされたのと同一の効力が生じることになります。

⑶ 公証人が作る債務名義(公正証書)

公証人というのは、公証役場という法務局所属の公務員で、中立かつ公正な立場で国の公務である「公証事務」を行う法律の専門家です。

裁判官や検察官を定年退職した人がなることが多いようで、公募に応じた人の中から法務大臣が任命します。

この公証人が作る「執行証書」というものも債務名義です。

公証人がその権限(公証人法)において作成する文書のことを「公正証書」と言い、その公正証書に執行に関する言葉が書かれている書面も、債務名義になります。

つまり、執行証書があれば、裁判に勝たなくても強制執行ができることになります。

3 債務名義を得た後の強制執行の流れ

借金の支払いを命じる債務名義については、上記のうち「確定判決」あるいは「支払督促」という形で取得されるのが大半です。

では、借金を滞納した結果「確定判決」「支払督促」の債務名義を取られた場合、債務者はどうなってしまうのでしょうか。

結論から言うと、借金を回収するために、債務者の給料や預貯金が差し押さえられることになるでしょう。

(差し押さえのタイミングは債権者ごとに異なりますのでケースバイケースです。)

給料の差し押さえでは、給料の一部が、債務者本人ではなく債権者(お金を貸している人)に直接支払われるようになります。

預貯金の差し押さえでは、銀行口座から滞納額に相当する残高が減ってしまいます。

場合によっては残高がゼロになっていることもあるでしょう。

なお、給料の差し押さえは完済まで続きますが、預貯金の差し押さえは一度きりです。

再度預貯金を差し押さえて残高から債権を回収したい場合、債権者は債務名義を再取得する必要があります。

差し押さえが実行される前なら取れる手段もいくつかありますが、実際に債務名義を取られ差し押さえをされてしまった状態から差し押さえを解除できる方法は「借金を一括で全額返済する」あるいは「個人再生・自己破産をする」の二択です。

前者は現実的な選択肢ではないため、弁護士に依頼をして個人再生・自己破産をし、差し押さえを解除するのが得策でしょう。

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